かつてSSAに相応しくないと感じた「Wake Up,Girls!」というユニット
「Wake Up,Girls! FINAL LIVE ~想い出のパレード~」
2019年3月8日(金)
とある声優アイドルユニットが解散の日を迎えた。
「Wake Up,Girls!」のアニメは1度しか見たことがない。
「Wake Up,Girls!」のライブは1度しか見たことがない。
そんな私が「Wake Up,Girls!」のラストライブを見届けるまでの話。
1.「Wake Up,Girls!」との出会い
「Wake Up,Girls!(以下WUG)」との出会いは、2014年1月。
察しの良いワグナーの方ならわかるだろうが、
劇場アニメ『Wake Up, Girls! 七人のアイドル』の公開である。
当時は2大巨頭が最も勢いをつけ始めていた時期。
声優アイドルグループの戦国時代を予感させていた。
同年2月に、さいたまスーパーアリーナ(以下SSA)2Daysの3タイトル合同ライブ「THE M@STERS OF IDOL WORLD!!2014」を実施した「THE IDOLM@STER」。
前年のアニメや3rdライブが大成功をおさめ、これまた2014年2月、SSA2Daysの単独ライブ「μ's →NEXT LoveLive! 2014 ~ENDLESS PARADE」を実施した「ラブライブ!」。
※2つのライブは私も現地参加していた。
毎週土日にライブを見に行く生活をしていた大学1年生の冬。
すでに確固たる地位を築きつつあった2つのグループに比べると、東日本大震災の影響で東北地方を舞台にするなど地域に根差した作風や、オーディションで選ばれた7人が当時無名の新人であるなど、素人/アマチュア感が強かった「WUG」。
他のアイドルにはない独自の個性が第3勢力の最右翼となりうるのではないか……
当時の私は期待しながら動向を見守っていた。
そして、訪れた封切の日。
いや、封切の翌日だったかも。
私は劇場まで足を運んでいた。
特典の複製原画は林田藍里ちゃんのシーンだった、ような。
さて、見終わった私の感想は「なんでこいつらパンツ見せながら踊ってんの」くらいであった。まったく面白くなかった。
一緒に見に行ったサークルの友人たちも首をかしげる出来であった。
聞いたところによると、当時の私は映画が終わった瞬間に「クソorクソ」とコメントを残したそうだ。
(彼らは福島県の出身で、河○塾仙台校で浪人をしていた経験があり、仙台駅を始めとした舞台の再現度に関しては感心していたが)
そこで、私は「WUG」を追うのを辞めた。
「7人のアイドル」はそれから始まるアニメ放送の前日談であるとのことだったが、アニメを見る気すら起きなかった。
結局私は、本日2019年3月10日に至るまで「7人のアイドル」以外の「WUG」アニメは見ていない。
2.「Wake Up,Girls!」との再会
一瞬にして終わった「WUG」との出会いと別れだったが、
思っていたよりも早く再開の日は訪れた。
アニソン好きの夏の祭典「Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-(以下アニサマ)」
8/29~31にSSA3Daysで行われた「アニサマ」。
初日は「JAM Project」「petit milady(というより当時好きだったazurite)」
そして「和田光司」さん
3日目は「いとうかなこ」「奥井雅美」「小倉唯」「ゆいかおり」「鈴木このみ」「田村ゆかり」「橋本仁」「水樹奈々」「May'n」
このメンバーを目当てに、私も3Daysすべてに現地参加した。
(3日目は「μ's」や「LiSA」、女性ファンにも刺さる「宮野真守」「OLDCODEX」もいたため、ダントツにチケットが取りづらかった記憶が残っている)
初日は「和田光司」さんの「butter-fly」を聴くことしか頭になかった私だったが、
開幕「JAM Project」や「茅原実里」さんが「境界の彼方」を歌ったことで、非常に気持ちが高まっていた。
そんな中、前半パートの真ん中くらいに「WUG」が登場した。
事前の下調べではチェックしておらず、当日まで出てくることすら忘れていた。
そして、アニメOPの「7 Girls War」→の劇場版OPの「タチアガレ!」へと続いたパフォーマンスだったが、正直に言わせてもらうとひどいものだった。
歌もダンスも微妙。必死にやっているのはわかるが、どう頑張っても素人。
これはもちろん本人たちのせいではないが、マイクの不調?か何かで歌が聞こえないなど、詳細は忘れたが何かしらのアクシデントもあり、どこまでも持っていないユニットなんだな、なんてことを聞きながら考える数分間。
今のままでは、SSAに立つのに相応しくない出演者だと、私は思った。
結局私は、2019年3月8日18時29分に至るまで「アニサマ2014」以外の「WUG」ライブを一度も見ていなかった。
3.「Wake Up,Girls! FINAL LIVE~想い出のパレード~」の当日券(9,400円 税込)を手にするまで
それから、私は「WUG」とはほぼ無縁の生活を送っていた。
「WUG」を好きな高校の友人から「なぜか声優がティーバッティングをする様を見せられた」というカオスな現場事情を聞いたり。
楽曲を神前さんやMONACAのクリエイターの皆さんが手掛けていることは知っていたので、CDやサブスクで聴いたりすることはあったが、それ以上の関わりはなかった。
※「16歳のアガペー」「極上スマイル」「素顔でKISS ME」「恋?で愛?で暴君です!」などは「WUG」への接触がそれくらいしかない当時の私でも、何度もリピートして聴くくらいには良い曲だと思っていた。
2018年6月15日。
「Wake Up,Girls!」の解散が発表された。
私はそれをTwitterで知った。
とは言っても、特に感じるものはなく。
高校の友人が哀しむだろうな、くらいの薄い想いだけが頭にあった。
時は流れて、2019年3月7日。
昼休み、会社のPCで日課のゲームニュースサイト巡りをしていたときのこと。
ある記事が、なぜか強烈に私の目を引き付けた。
昼休み残りの時間全てを使って、この2つのインタビューを読み終えたとき、
なぜだろう、無性に彼女たちのパフォーマンスを見たくなった。
走り始めた瞬間だけを見て、それ以上追いかけるのを辞め、以降ほぼ関わりを持たなかったユニットに、なぜこれほど興味を惹かれたのか。
理屈ではなく、感情が訴えてきた。
このライブに行かなければ、後悔すると。
仕事を終え、家に帰る途中では「 #WUG_SSA」のタグでTwitterを追いかけ、色々な投稿を読んだ。
僕は『Wake Up, Girls!』のライブを初めて見るのが、さいたまスーパーアリーナという方が羨ましい https://t.co/4Yvpydi9o5 #WUG_JP pic.twitter.com/It8xKMQrmT
— アニメイトタイムズ公式 (@animatetimes) March 1, 2019
apple musicでは一部の曲しか入れていなかったが、ラストアルバムを全曲ダウンロードして聞き漁った。
特に最後の4曲「海そしてシャッター通り」「言葉の結晶」「土曜日のフライト」「さようならのパレード」は繰り返し繰り返し聴いて、歌詞やメロディ、そこに込められた物語を咀嚼した。
「タチアガレ!」と「さようならのパレード」を聴き比べたり、「海そしてシャッター通り」を流しながら、東北の写真を探してみたり。
もちろん、6年間「WUG」を見てきた人からすれば、到底理解できる世界じゃない、と一蹴されてしまうかもしれないのだけど。
そうして、公式サイトで当日券の発売を確認した私は、1つの問題にぶち当たった。
平日ということで、多くの社会人ワグナーたちが頭を抱えたであろう「仕事」、
ではなかった。
偶然にも(運命的にも?)3月8日に私は有休休暇を申請していた。
しかも、申請した自分ですら、その存在を当週火曜日まで忘れているくらいであり、特に用はないけど、何となく疲れたから休むか、と思い申請した程度の休みだった。
「チケット代」だった。
金銭面の意識が低い私は、毎月給料日直前に口座がすっからかんになる人間だ。
先月の予想外の出費により、給料日3週間前にしてすでに私は追い込まれていた。
チケット代「9,400円」。
これを払うと、翌週にやってくるクレジットカードの支払いができずに、カードが止まる。
心はどうしようもなくSSAに向かっていたのに、その事実が、私に足踏みをさせていた。
その日、結論を先送りにして、私は寝た。
BGMに枕元で「さようならのパレード」を流しながら。
翌日。運命の3月8日。
家を出た瞬間から、結局前日に仕事が終わらず、出社した午前中まで。
ひと時も「WUG」のことを考えない時はなく、常に彼女たちの紡いできた楽曲たちに触れていた。
先輩の机上に今週の「週刊ファミ通」が置いてあったのを見つけて、黙って拝借し、「WUG」特集のページも読み漁った。
12時。
気づけば私はキョードー東京に電話をかけていた。
だが、繋がらない。
無機質な女性の声で「回線が込み合っているので、時間をあけてかけてください」といった旨のメッセージが繰り返し流れる。
友人に「繋がらない。縁がなかったのかも」と伝える。
12時50分。
18回目の電話。
ついに電話が繋がり、無事に当日券を入手した。
こうして、私は「WUG」の最後の晴れ舞台への参加を決めた。
何がそこまで私を突き動かしたのか、いまだにわかってはいない。
その後、無事に午後休を取得した私は、会場に向かう途中で、過去のインタビューなどにも目を通した。
しかし、そこで私はキャラクターの名前はおろか、
スタッフロールやニュース記事で時々目にしていたメンバーの名前の読み方すら、
誤って覚えていたことに気が付いた。
「吉岡茉祐」さんは「よしおかみゆ」
「永野愛理」さんは「ながのあいり」
「青山吉能」さんは「あおやまよしのう」
「山下七海」さんは「やましたななみ」
「奥野香耶」さんは「おくのかや」
「高木美佑」さんは「たかぎみゆ」
という認識だった。 ※申し訳ございません。
(1つ目は「松岡茉優」と同じ「茉」なのだから、草冠の下の部分に引きずられた愚かさが露呈しただけである)
着々と「WUG」への知識をつけていく中、
17時21分、私はさいたま新都心駅にたどり着いた。
9,400円と引き換えに、命よりも重たい紙切れを手にした後、
すぐに場内に入った私を待ち受けていたのは、並べられた終わりが見えないほど多くのフラワースタンドだった。
これまでに私が訪れたどのイベントで見た数よりも多かった。
席は400レベルの2列目。
奇しくも、アニサマで初めてWUGを見たときと同じ、400レベルであった。
4.「Wake Up,Girls! FINAL LIVE~想い出のパレード~」
冒頭の事務所の方々の掛け合いは、アニメを見ていない身として語ることは何もなく。
今か今かと7人の登場を待ち続けた。
ステージに設置された3つのモニターに映る7人の姿。
それぞれが(おそらく)劇中に由来する物や場所と共に映し出された。
そして、駆け出した7人がSSAの前に並んで、
「タチアガレ!」のイントロが始まって、場内が緑一色に染まり、
爆発とともにステージが明るく照らされ、合わせて制服姿の7人が飛び出してきたところで、
私は、大号泣していた。
SSAに相応しくないと感じさせた彼女たちが、一糸乱れぬパフォーマンスで場を支配し、アウェイの中でコールを発していたワグナーたちは、今やSSA全体を包み込むほどの声を張り上げ、圧倒的な一体感を作り上げていた。
SSAは「Wake Up,Girls!」の7人と会場に詰め掛けた1万3000人だけの空間となった。
ファイナルライブというのを忘れさせるくらいの熱量、笑顔で踊り、歌う7人の少女たち。
2019年3月8日のさいたまスーパーアリーナは、彼女たちのために存在していたと最初の数分で理解した。
1曲目を終えて、続けざまに「16歳のアガペー」と続く。
2曲目でも私は号泣した。
1曲目よりも曲調がやや大人しいこともあって、歌詞をかみしめながら落ち着いて聴いていたら涙腺が壊れた。
というか、元々すごい好きな曲だったし。
アニサマ2014因縁の1曲。
この6年間での7人の圧倒的な成長を見せつけられて、既にズタボロな私に、今度はワグナーが容赦なく追い打ちをかけてきた。
この曲は、全編通してコールが入る構成になっているが、
1万3000人によるコールは、Aメロで一人一人の名前を呼んでいくところに始まり、掛け声も含め、完璧に仕上げられていた。
「WUG」というユニットと共に、「ワグナー」というフォロワーたちが成長してきた姿を目の当たりにし、私はやはり号泣した。
なぜ、このブログの前半部分であれだけこき下ろしておきながら、泣いていたんですか、と聞かれれば、理屈で返すのは難しい。
1つ心当たりがあるとすれば、断片的な情報・知識でも知っていた通り、「WUG」が決して王道アイドル路線を歩んできたわけではなく、山あり谷あり、さまざまな逆境に立ち向かってきた唯一無二のユニットであり、集大成のSSA単独ライブでそのすべてを、自分たちの1つの在り方としていかんなく発揮していることに、純粋に心を打たれた可能性はある。
とはいえ、結局それは「エモかった」から、としか言いようがない。
「WUG」はとてつもなく「エモい」。
あとは、ライブ中に実際に考えていたことを書き連ねていくことにする。
・(MC中)最初の3曲で9,400円のもと取った
・(MC中)ファイナルライブとは思えないくらい、演者も観客も楽しんでいるのが伝わってくる
・(MC中)高校の友人が言っていた通り、よしおかまゆさんの魂の歌唱、すごすぎ。ああいう歌い方本当に好き
・(MC中)事後物販でパンフとTシャツ買おう
・(言の葉 青葉で)普段聞いてるよりライブの方が10倍エモい
・(アニメ映像が流れているとき)帰ったらアニメ見よう
・(FINAL TOUR黒衣装を見て)うわ、超かわいい、この衣装好き
・(素顔でKISS MEで)真ん中が次々に移り変わる流れ、すごいいい
・(恋?で愛?で暴君です!で)かわいすぎわろた
・(キャラソンメドレーで)未履修なのは恥。帰ったら聴こう
・(HIGAWARI PRINCESSで)7人とも最高にヒロインでプリンセスや……
・(極上スマイルで)会場のギアがサードまで上がった……圧倒的キラーチューン
・(BtBで)尊い、神の曲が舞い降りた
・(MCで口々に楽しい、という演者を見て)流れ、変わったな
・(言葉の結晶で)ダンスかっこよすぎわろた、ライブ映え理解
・(さようならのパレードで)さようならは嫌だよ~~~~(号泣)
後ろの7つの光がきれいすぎるよ~~~~~
・(アンコールのSHIFTで)しっとりさせたまま終わろうとしないWUGらしさ感じる。しかし衣装が可愛い
・(アンコール後のWアンコールをワグナーが叫ぶ際中)WUGはもちろん本人たちもここに至るまでに凄まじい努力を重ねてきたんだろうけど、楽曲制作陣を始めとした周りにめちゃめちゃ恵まれている部分もあったんだろうなぁ
・(Wアンコールの手紙で)ワグナー絶対死んだ
・(たかぎみゆさんの手紙で)いい娘だ……本当にいい娘だ。感謝の気持ちをきちんと伝えられる娘に悪い子はいないんや……(号泣)
・(周りのワグナーのすすり泣きを聴きながら)俺、今日あなたたちとここで泣くことができて本当によかった……
・(やましたななみさんの手紙で)絶対こういうところで泣かなそうなタイプだと勝手に思ってたのに、手がすごく震えていながら頑張って読み上げる姿が、あんなに細いのになんて強い……(号泣)
・(たなかみなみさんの手紙で)自分についてこいといえる声優って、そういないんじゃないでしょうか……みんな芋だと思っていたあの日の自分にこの尊い姿を見せてやりたい……(号泣)
・(よしおかまゆさんの手紙で)最後の最後で「今後私がこのメンバーの真ん中に立つことはない」って言いきれる存在がセンターであったことが「WUG」がここまでやってこれた一因なんだろうきっと……今が一番幸せで本当によかった……(号泣)
・(えいのあいりさんの手紙で)俺が生きている間は、「WUG」というとんでもないグループがあったことを語り継ごう……(号泣)
・(おくのかやさんの手紙で)「私を声優にしてくれてありがとう」じゃないんだよ「私を声優にしてくれてありがとう」じゃ……(号泣)
・(あおやまよしのさんの手紙で)立派なリーダーだ……俺も明日から人生の第2章始めよう……(号泣)
・(WアンコールのPolarisで円になる7人を見て)(号泣)
・(Tアンコールのタチアガレ!で)(号泣)
・(マイクを通さずに最後の挨拶をして下っていく7人を見て)(号泣)
・(最後のワグナー達の鳴りやまない「Wake Up,Girls!」を聴いて)(号泣)
5.終演後
結局、私の初めての「WUG」ライブは3時間半ほぼ泣き通しとなった。
帰宅途中、「#WUG_SSA」のタグで検索し、色々な人の抱える思いを見つめた。
普段は辛口なオタクたちも、このライブには絶賛の嵐だった。
翌日、7人のブログを見てまた泣いた。
当日より、次の日の方が、喪失感があった。
そして、今日も私は「WUG」の曲ばかりを聴いている。
「Polaris」は今日も私を照らしてくれている。
おそらく私は今後、「WUG」のアニメをすべて見て、彼女たちが出ていたラジオなどもいくらか漁り、過去のライブの映像を見て、どんどん「WUG」を好きになっていくのだろう。
そして、堀江由衣と田村ゆかりがキンスパに出ると分かったとたん「やまとなでしこ再結成!」と叫んでいた大学の友人と同じように、きっとあり得ないだろう「WUG」の再結成を願ってしまうのだろう。
終演後、ライブに来れなかった友人にライブの感想をぶちまけたところ、
「●●が見に行ってくれてよかったわ」
と言われた。
進行形で彼女たちを応援することは叶わないけれど、彼女たちを語り継ぐことで、
「WUG」という存在に関わっていければ、FINAL LIVEに参加したビギナーワグナーの意義もあるのではないか。
2019年3月8日。
そこにいた7人のアイドルは、紛れもなくオンリーワンであり、他に替えの利かない存在だった。
かつて、SSAに相応しくないと感じた「Wake Up,Girls!」というユニットは、
最後にSSAに立つべくして立ったユニットとなっていた、という話。